工場の生産ラインで、樹脂や放熱材を塗る装置の話です。
はじめまして、工藤誠と申します。
車載電子部品メーカーで生産技術を18年担当し、いまは中小の工場の工程改善を手伝っています。
放熱グリスの塗布ラインを立ち上げたとき、私は装置のカタログで「使用可能粘度」の欄ばかり見ていました。
材料の粘度が範囲に入っていれば問題ないと考えていたのです。
ところが、フィラー入りの材料は粘度の数字だけでは判断できません。
今回はナカリキッドコントロールの1液型ディスペンサー「P-FLOWシリーズ Hタイプ」の仕様を、その目線で読んでみます。
フィラー入りの材料は「重く」て「硬い粒入り」
放熱材や封止材には、熱を逃がすためにアルミナなどの粉(フィラー)が混ぜてあります。
関西大学の研究シーズ資料にも、放熱性を持たせるにはフィラーを高充填する必要があり、粘度の上昇や脆化を引き起こすと書かれています。
熱を逃がす性能を上げるほど、材料は重くなるわけです。
粘度の単位mPa·sは、数字だけ見てもぴんと来ません。
産総研の計量標準報告によれば、水が1 mPa·s、しょうゆが約6、オリーブオイルが約100、卵黄が約1,000です。
Hタイプが対応をうたう上限の1,050,000mPa·sは、卵黄の1,000倍を超えます。
もう一つが硬さです。
関東経済産業局の研究開発成果報告書には、絶縁性の高熱伝導フィラーは硬いものが多く、混練や成形のときに加工機の接触面を傷つけることが問題になっているとあります。
報告書が対象にしているのは混練機や成形機です。
それでも、ポンプの中で材料を押し出すディスペンサーにも同じ理屈が当てはまると私は考えています。
P-FLOW Hタイプの仕様を2つの性質に当てはめる
Hタイプは「高粘度・高フィラー入材料に対応」とうたう、プランジャポンプ式の1液型です。
公式ページの記載を、材料側の課題と並べるとこうなります。
| 材料側の課題 | Hタイプの記載 |
|---|---|
| 粘度が高く、押し出しにくい | ポンプ内の耐圧19.6MPa、使用可能粘度1〜1,050,000mPa·s |
| 硬い粒子が摺動部を削る | 特殊な材質で計量ポンプの耐摩耗性を向上 |
| 毎回同じ量を出したい | Φ10mmプランジャによる容積計量、吐出量0.4〜7.5ml/shot |
同じシリーズのVタイプとBタイプは、使用可能粘度の上限が200,000mPa·sです。
耐圧と耐摩耗性について書かれているのは、3機種のうちHタイプだけでした。
同社のコラムでも、フィラー入りの放熱材に対応する機種としてHタイプが紹介されています。
ただし「特殊な材質」が具体的に何なのかは公開されていません。
ここは問い合わせて確かめておきたい点です。
仕様の全体は、高粘度の材料に対応したディスペンサー、P-FLOW Hタイプの製品ページで確認できます。
導入前に確かめておきたいこと
仕様表には、設置条件にかかわる数字も並んでいます。
- 本体重量は500kg、電源はAC200V(Φ3)・3kW
- 材料はカートリッジタンクから供給する
- 摩耗する部品と交換の目安は、製品ページには書かれていない
卓上で使う小型機ではなく、床に据える装置です。
置き場所と電源を先に押さえておかないと、話が前に進みません。
そのうえで私がいちばん勧めたいのは、実際の材料での試し打ちです。
同社のテストルーム申込フォームには、フィラーの有無を申告する欄があります。
フィラーの種類や量が違えば、同じ粘度でも装置の中での振る舞いは変わります。
カタログの数字は、試し打ちの結果と並べて初めて判断材料になります。
まとめ
- フィラー入りの材料は、粘度が上がるうえに装置を削る硬い粒を含む
- Hタイプは、耐圧19.6MPaと耐摩耗性の2点でこれに応える設計になっている
- 据え置き型なので設置条件を先に確認し、最後は実際の材料で試す
粘度が範囲に入っているかどうかだけで決めず、フィラーの種類や量まで伝えたうえで相談してみてください。
最終更新日 2026年10月12日 by dustriah



